増田さんへの応答ー体罰についての一考察

部活の思い出:追加 ーはてな匿名ダイアリー
http://anond.hatelabo.jp/20090205003425への応答です。(ブコメで約束してしまいました)

まず、私の立場は体罰原則禁止です。話が長くなるので始めに表明しておきます。その方が展開が予想しやすいと思うのと、増田さんが経験された部活の専制体制を否定するので、お聞き苦しい部分があったらすみません。

愛は…どうだろう。あったのかな。なかったのかな。
本当にわかりません。

体罰を消極的に容認してしまう理由は大きく3つあると思います。勝負に勝つため。礼儀を身につけられる。そして愛ゆえにです。

まず、スポーツの勝負に勝つために体罰は有効に働く場合もあるかも知れないと同時に、決して必須であるとはいえません。体罰を行わずに強いチーム作りを目指すことも不可能ではありません。であるならば、体罰を用いる正当性はそこにはありません。

かつ、勝利を目指すことは大切なことであると同時に、結果として勝てなかったとしても、負けたことで価値がなくなるわけではありません。価値がないというのであればそれは思い上がりです。プロスポーツならともかく、少なくとも教育の一環として行っているのであればなおさらです。勝利以外にもスポーツは様々なことを教えてくれます。指導者が良い条件付けさえ行っていさえいれば、敗北からでさえ学ぶものはあります。

元々スポーツには勝ちに拘る以外に楽しむという要素も多く含まれています。そこに修行のような意味づけを行ってしまうのはおそらくアジア圏特有の考え方でしょう。そして修行にまで話を広げてしまうとそれは寺(宗教:主に禅宗)や軍事鍛錬の領域であり、解脱か殺人のためという様に目的が変わってきます。


礼儀についても同様です。体罰を行うことで効率よく礼儀を刷り込ませることが出来る可能性があると同時に、体罰を行わないことでも礼儀の大切さを教えられないとも言い切れません。であるならば、やはり体罰を肯定していい理由にはなりません。


最後に愛。体罰が発生したときにそこに愛があるかどうかを客観的に証明する方法はありません。(少なくとも私には思い当たりません)そして、愛がなくても、愛の名の下に体罰を行うことは可能です。愛の名の下に(例えば試合での敗戦などという軽々しい理由で)自分の怒りを発散させる体罰を行うことも出来てしまうのです。これは愛という偽りの鎧を身に纏いつつ自分の激情を放出させ人を傷つける、周囲を騙すという点で非常に狡猾であり悪質です。

またそこで、ケースバイケースで許容しても良いのではないか(教師の人となりを周囲が見て判断すればよい)という意見も考えられますが、それは子どもを傷つくリスクにさらすことになります。ある意味ギャンブルです。しかもそのリスクをかいくぐったとして得られるものは一定の礼儀作法の習得と将来に置ける飲み会でのネタを入手できることぐらい。これを私はリスク甚大リターン極小であると考えます。


以上で述べたい事はほぼ述べきったのですが、いくつか補足的に書いておきたいことを書いておきます。

まず、大ざっぱに考えて世の中には、教育に体罰を用いることを許容し是とする人と、明確に否定する人の2種類に分けられると思います。元記事のブコメでも指摘されている方がいましたが、体罰を受けて育った大人は体罰に許容的になりやすいと思います。メタ視点に立つと、体罰許容論は世代を超えて体罰を再生産していくのです。(抑圧移譲という言葉が出てましたね。)


実は私は最近まで体罰を必要悪としてある程度許容していました。私自身体罰を受けて育ち、それに感謝していたからです。厳しくしつけてもらっていて今の自分があると思っていたからです。これが洗脳であったと気づけたのは、本当に偶然だったと思います。それくらい無意識の奥深くにもぐり込んでいくのです。
ストックホルム症候群という言葉も出てました。)


もう一つ。体罰には問題を解決する手段として暴力を振るっても良いというメタファーを子どもたちに伝えます。そういうメッセージ〜暴力・侵略・戦争を肯定し、法を尊重しない(体罰は学校教育法上禁止されている)〜を教育機関が発信するということなのです。憲法や人権を大切にしない人間を育てるのは現代の初等中等教育の目的・方向性とは真逆です。教師として不的確といわざるを得ません。


応答が遅れてすみませんでした。最後に参考記事のリンクを張っておきます。


体罰の何がダメか未だに分かってない人が多すぎるので、書く。ーはてな匿名ダイアリーhttp://anond.hatelabo.jp/20081121183459


拙ダイアリーから3つの関連エントリ(内容が連続してます)
体罰はいけないと言うけれどhttp://d.hatena.ne.jp/matcho226/20081027/1225111422
体罰反対を表明するために避けては通れない話http://d.hatena.ne.jp/matcho226/20081028/1225208878
背理法体罰の正当性がなくなっていけばいいなhttp://d.hatena.ne.jp/matcho226/20081030/1225370490