僕に殺されたニワトリ

 ☆ この記事は、ある1人の”へなちょこ”な男が、1羽のニワトリをビビリながら殺しました、というお話です。


 前回の記事 生きるために殺す 自分の欲望で殺す
 id:matcho226:20081002

ニワトリはころしたことがあります。なぜころせたかたというと、苦しみを少なくころせる方法を教えてもらいながらころしたからです。(詳細は別のエントリに書こうと思います。)


 今の日本では、普通に生活していてニワトリを殺す機会はまずない。そんな中あえて自分の手でニワトリを殺そうなど、物好きとしか言いようがないかも知れない。


 無理矢理こじつけるのならばたぶん、自分の力で食糧をつくることで、自分の生への根源的な執着心を見つめたかったのだと思う。


 私の親もニワトリを潰す経験はしていない。とはいっても、祖父や祖母が潰す様はよく見ていたらしい。話題を振ると結構具体的な話をしてくれる。クビをちぎった後クビがない胴体が走り回っただの、クビの骨が折れてもすぐには死なないだのとほとんどホラーじゃないかと思える話を聞かされていた。


 数年前のある時、ニワトリを殺す機会に恵まれた。しかもレクチャー付きという願ってもない機会だ。


 早朝、鶏小屋に行きニワトリにエサをあげた。小屋にいたのは廃鶏と言って、卵をあまり産めなくなって業者からただで譲り受けたおばあちゃん鶏だ。15羽くらいの中から、今日潰す2羽を選び、狭い箱に閉じこめ隔離した。この2羽にはエサはやらずに夕方に潰すとのことだ。(解体時に出てくるうんちが少なくなるように)


 私は親に聞かされていた素朴な疑問をぶつけてみた。「暴れたりはしないんですか。」


 「動物も自分が殺されることはなんとなく分かるみたいですよ。でも不思議なものでね、自分が世話をしたニワトリはほとんど暴れませんね。でもよそからもらってきてすぐ殺そうとするとひどく暴れます。あと殺し方にもよるでしょう。ニワトリが苦しまないやり方でやりましょうね。大丈夫ですよ。」


 夕方になった。まずブルーシートを敷き、おがくずをたくさんしいた。落ちる血を吸い込ませるためだ。そこに洗濯竿のようなものを準備し、ニワトリを逆さ吊りにして殺すのだそうだ。


 ニワトリの片足にひもを縛り箱から出した。そしてひもを持ったまま2分くらい黙祷した。この時間をニワトリにあげることによって、ニワトリも少し恐怖が薄まるのだと言っていた。長いようで短い、短いようで長い、何とも言いようのない2分だった。感傷的になっていたせいかもしれない。


 ニワトリを吊した。片足だけで吊すので、もう片方はぶらぶらしている。この方がニワトリにとって楽なのだろうか。大人しいもので暴れる様子はない。(とはいっても変な姿勢にされているわけだから、多少は動くのだが)羽をばたつかせることがないように背中越しに縛り固定した。いよいよだ。


 「ナイフで頸動脈を切り、失血死させます。」「はい。」


 片手でニワトリの頭を固定する。体温を感じる。
 頸動脈の場所を教えてもらい、その内側にフォールディングナイフを差し込んだ。ニワトリの目は閉じ、痛みに耐えているように見える。時折瞬きをし、心なしか痛そうな表情に見える。そのまま90度ナイフの角度を変え、首の内から外へナイフの刃を進めた。血が出てこない。外してしまった。変に高揚してしまい動きがぎこちなくなってしまう。


 気持ちを入れ直してもう一度。今度は血が出てきた。ピューッと出てくるものだと思っていたがそこまでの勢いはない。ぽたぽたと滴り落ちる。頭と首をしっかりと支持してあげる。脈があるがまぶたはもう開かない。


 暴れないと言っても、少しは体を動かす。苦しいのだろうか。そうこうしているうちに痙攣が始まり、ニワトリが失禁してしまった。体は動いているが、もう意識はないそうだ。


 このニワトリは今日一日をどのように過ごしたのだろう。動物は動物なりに自分の死期を感じ取ることができると聞いたことがある。


 私も生きたい。ニワトリも生きたい。そういう生と生のぶつかり合いも多少は覚悟していた。しかしミスがあったとはいえ拍子抜けするぐらいニワトリは命を差し出してくれた。



 言葉にはできない感情が私の心の中にはたくさん生まれていた。



※ もう少しだけ続きます。
※ 写真があるかもしれないので、ぜひ見たい!というご意見があれば掲載を考えます。



※今回の記事を書くきっかけを与えて下さった記事のリンクです。
hituziのブログじゃがー - 「自分の手で殺せる生き物だけを食べよう」(きっこのブログ

http://d.hatena.ne.jp/hituzinosanpo/20080928/1222573039


hituziのブログじゃがー - いつも屠場(とじょう)労働者の みなさんが 笑顔で いられますように。

http://d.hatena.ne.jp/hituzinosanpo/20081003/1222965604